31日 3月 2024
この静かな防波堤に 深夜の冷たい ひんやりとした色が写る 下に見える海は一定の黒色 その横にふんわりと明かりが灯った  漁師の小屋がある 小さい頃 私はそこで 父と貝殻を並べて遊んだ 私はそんな風景の中で育った | (過去) | ある日の夜  両親の言い争う声が1階から聞こえた 私は足音を忍ばせて  2階から階段を少しだけ降りた しばらくすると...
04日 5月 2023
外が暗くなると あなたに逢えるという喜びと あなたが決まった時間に帰るという 寂しさが一緒に襲ってくる 誰にも言えない背徳の関係 あなたが私のところに来るのは 決まって夜の8時半 残業という名の 言い訳が通用する時間 最初はあなたに決まった人がいるなんて 知らなかった でもあなたをまっすぐ見ている私には すぐにわかった...
04日 5月 2023
桜よ 美しい桜 あなたは散る運命なのを わかっているんでしょうか あなたは咲く時間が決まっている でも その時間はとても素晴らしく 艶やかで 美しい 昼は柔らかいピンク色の花びらを 少しの風に躍らせ 話しかけてくる そして夜は 近くの街灯が反射して 花びらを薄っすら紫に染めて 水面に反射する姿がとても幻想的だ 私はこの夜の妖艶な桜がとても好きだ...
04日 5月 2023
今夜も綺麗な月だ 私はいったいどれだけの時間(とき)を ここで過ごしたのか 何度も 月が昇っては沈んだ この広い城に 私は一人 ヴァンパイアである運命に何度問いかけただろう いくら孤独でも 誰も私を死なせてくれない 親しくなった人々は みんな先に死んでいく ただ喉の渇きに耐えるだけ 城の窓からみえる月が そんな私を見て 哀れんでいるようだった...
04日 5月 2023
パブが立ち並ぶ 細い道を歩く 深夜に開く店はわずかになり 街灯が目立つ時間 通りには店から出てきた人が 酔いを覚ましながら 帰るのを惜しんで 立ち話をしているいつもの風景 絵に描いたような家庭には 恵まれなかった私は 16で家を出て この街に来た 最初の4年は雑用でも何でもやった そして20歳になり 私はこの場所に落ち着いた...