『夜桜ひらり』男女不問

桜よ 美しい桜

あなたは散る運命なのを

わかっているんでしょうか


あなたは咲く時間が決まっている

でも その時間はとても素晴らしく

艶やかで 美しい



昼は柔らかいピンク色の花びらを

少しの風に躍らせ

話しかけてくる


そして夜は

近くの街灯が反射して

花びらを薄っすら紫に染めて

水面に反射する姿がとても幻想的だ

私はこの夜の妖艶な桜がとても好きだ


そんな桜を見ていると

一枚の花びらが

私の髪を ひらひらとかすめ

近くの川に舞い落ちた

そして緩やかに流れていく花びらを

見えなくなるまでしばらく眺めていた


はっと我に返ると頬につたう涙に気がついた

自分の中にしまいこんでいたものが一気にあふれ


─『私は何をやっているんだろう』

─『何を 見てきたんだろう・・・こんなにも桜は美しいのに』


自分の愚かさに 少し震えて

唇を噛み締め 腕をぎゅっと抑えた


次の瞬間 風がびゅーっと吹き

花びらが舞った

そしてゆっくり私の上から降り注いだ

まるで私を優しく包むかのように



咲く時間が決まっていても きちんと咲く

あなたはとても素晴らしいのに


『、 、 、ごめんなさい』

『もう少し頑張ってみる』


私は小さく呟いて 木の幹に手をあてた

しばらくして 私は桜を離れ 歩き出した

次に来るときはきっと笑顔で会いましょう

そう思いながら顔を上げた




(完)

※ボイコネ投稿2021年3月29日